なぜプロはシリーズを書き続けられるのか
「ネタがない」という問題の正体
小説を書いていると、よく聞く言葉がある。
「次のネタがない」
一本書いたあとに止まる。
続編が出ない。
シリーズが続かない。
しかし、この問題を聞くたびに私は少し困っていた。
なぜなら、自分の感覚では
ネタは自然と浮かぶもの
だからだ。
ネタを探した記憶がほとんどない。
世界を考えていると、出来事は勝手に浮かんでくる。
では、この差はどこから生まれるのだろうか。
ネタがない人の思考
多くの人はこう考えている。
面白い出来事
↓
物語
つまり
-
面白い事件
-
面白い設定
-
面白い展開
をまず探す。
しかし、出来事は有限だ。
そのため一度書くと
「もうネタがない」
という状態になる。
プロの思考
一方で、長く書き続ける作家は少し違う。
世界
↓
構造
↓
出来事
↓
物語
ここで重要なのは
【構造(関係性の仕組み)】
である。
例えば
-
国家
-
経済
-
宗教
-
組織
-
家族
こうした関係があると、そこには必ず
摩擦(コンフリクト)
が生まれる。
そして摩擦は
事件を自動生成する。
例:勇者が魔王を倒した
出来事だけで物語を作ると、ここで終わる。
しかし構造を見ると、むしろここから始まる。
政治
魔王がいなくなると
-
魔族の政権空白
-
人間国家の侵略
-
新しい権力争い
が起きる。
経済
魔王軍の
-
武器供給
-
食料流通
-
奴隷市場
が崩壊する。
社会
魔族の難民が発生する。
つまり
物語はむしろ増える。
サイドストーリーが無限に生まれる理由
構造があると、視点を変えるだけで物語が増える。
例えば同じ戦争でも
-
魔王軍の下級兵士
-
魔王城の料理人
-
勇者パーティの元メンバー
-
戦争で儲けた商人
-
魔族の難民
すべて別の物語になる。
つまり
ネタは作るものではない。
構造から発生する。
「ネタがない」という感覚の正体
この問題は
想像力不足ではない。
多くの場合
構造が見えていない。
出来事だけを見ると物語は一つしかない。
しかし世界の構造を見ると、そこには
無数の衝突
が存在する。
なぜプロはシリーズを書き続けられるのか
理由はシンプルだ。
プロは
出来事ではなく世界を作る。
世界を作ると
-
社会
-
権力
-
利害
-
歴史
が生まれる。
そしてそこから
物語が自然に発生する。
物語は「事件」ではなく「構造」から生まれる
小説を書くという行為は、よく
「面白い出来事を考えること」
だと思われている。
しかし実際は少し違う。
小説を書くとは
世界を設計すること
に近い。
世界ができると、そこでは人間が動く。
人間が動くと、衝突が起きる。
衝突が起きると、事件が生まれる。
つまり
物語は生成される。
ネタは探すものではない
ネタがない人は
「ネタを考えよう」
とする。
しかし、もし世界構造を作れば
ネタは探す必要がない。
なぜなら
世界が事件を生み続けるからだ。
そしてそれが
シリーズが続く作家
と
一本で止まる作家
の違いなのかもしれない。

