蜻狸『山百合の小兵』第6稿

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燭へし、くりつるがすでにいる本丸。京都も終わってる。

槍一本目の蜻蛉切。
錬度1だけど、精鋭部隊と一緒に阿津賀志山に出陣。「後ろで見てろ! お前の槍は敵に刺さらん!」と言われて大人しくしていた。長谷部、燭台切、大倶利伽羅、鶴丸、タヌキ、蜻蛉切で出陣。
 タヌキの名前もまだ知らないぐらい。
 でも、小さいタヌキが戦場で凄く目立っていた。
タヌキが左の敵をなぎ払おうとしている所を右からもう一人の敵に狙われているのを見つけてしまう。
「あの小兵! 危ない!」
 蜻蛉切が右の敵の胸に槍を突き出す。
 その瞬間、左の敵を切り払った同田貫の切っ先が右側に向くのを蜻蛉切は見た。
 最初から右の敵を知っていたのだ。今だと、真後ろにいるというのに。
 だが、すでに自分の槍も引っ込めることができなかった。
 そして、『刺せなかった』のだ。
 『お前の槍は敵には刺さらんっ!』と言っていた長谷部の言葉を思い出す。
 つまりは、敵の胸を切っ先で突き飛ばしてしまうことになる。差し貫くつもりだったので、勢い、突進していた。
 敵の喉元をタヌキの切っ先がかすり、もっと敵は遠くへ飛んで行く。蜻蛉切が押さなければ、確実に首を切断した刃だ。
 蜻蛉切は、見ていた。
 金色の、闇を。
 蜻蛉切が突き飛ばした敵は、燭台切が走り込んで切り伏せた。
 同田貫の右手が、蜻蛉切の柄の上を滑るように旋回する。
 肉食獣の牙を、見た気が、した。
「槍が残ってるぞっ!」
 猛禽類の瞳が叫んだその音を、蜻蛉切はかろうじて、聞いた。
 まだ、彼の右手は蜻蛉切の柄の上に、ある。
 二尺向こうに居たはずなのに、大きく一歩踏み込んで、来た。蜻蛉切もまだ、突進中だ。
「それは味方だ! 同田貫」
「槍だぁっ!」
 そうだ。
 自分は、槍だ。
 彼は、間違っては、いない。
 槍、だ……
『槍から殺せっ!』と、短刀達が自分に向かって笑っていたことを蜻蛉切は覚えている。
 同田貫は左足で踏み込んだ勢いで上半身を旋回させ、切っ先を、蜻蛉切の首に切り上げた。
 彼は錬度82。蜻蛉切は1。
 避けられる、筈が、無い。
 右肩に切っ先が食い込んだ。
 冷たい金属の感触とともに、肋の手前に刀が行き過ぎる。鎖骨が切断され、喉仏に……
 否。まだ、蜻蛉切は止まれては、いない。
 彼の切っ先がこめかみにめり込んだのを、見た。
 なんと美しい黄金の瞳だろうか……
 満面の笑みに突っ込んでいく自分を感じる。
 頭の中が冷たくなって、キラキラシャリン……と、とても美しい音を聞いた。
 気がついたときには、蜻蛉切は戦場のど真ん中にしりもちをついていた。鶴丸が右腕を止血してくれ、同田貫が燭台切にはがい締めにされて、同田貫と自分の間に近侍の長谷部が立っている。近侍の左手は、同田貫の切っ先を握り込んで血を溢れさせていた。
 蜻蛉切は、そのまま後ろに倒れ込む。
「寝てろ。槍くん。脳味噌やられてる。もう動けんだろ」
 誰かに言われて頷こうとしたが、首が動いた気配はない。先程冷たかった頭の中が、熱い。
「落ち着いて同田貫くんっ! 彼は味方だよ!」
「敵を逃がしたっ! 俺が取る筈だった首を逃がしたっ! 敵だっ! 敵を助けやがった!」
「君を助けようとして槍を突いたら、錬度が足りなくて突き飛ばすカタチになっただけだよ。敵を助けようとしたわけではないよ! 落ち着いて」
「はぁっ? そんな奴を連れてくるなっ!」
「仕方ないだろう。新参は阿津賀志山で育てるのが主の方針だから。もう、錬度12になってるし。次は刺さるぐらいはするよ」
 同田貫が蜻蛉切を見て、燭台切を見上げる。
「ハッハッハ。あれがウチで一番の戦闘狂だ。お前さん、はなから派手な洗礼受けたなぁ? 俺の声、聞こえてるか?」
「はい…………ただ、先程からずっと、綺麗な音が聞こえます………………なんと美しい……」
「あー……脳の髄がいかれっちまってるからなぁ…………長谷部っ! これ、撤退だろ? 火を起こそうぜ」
「そんなに悪いのか?」
「頭が千切れ掛けてる」
「全然、痛くはありませぬ……」
「それが一番やばい」
 そうだな。痛さを感じないというのは、死ぬ寸前だな……と、蜻蛉切も頷く。
「同田貫は俺たちを顔で見分けておらんからな、お前はしばらく敵扱いされよう。側に寄るな」
「顔で見分けていない……とは?」
「大雑把に、色と体格でしか見てないみたい。顔を覚える気が無いんだろうね。焚火ついたよ……と、もうやってるね」
 ようやく落ち着いたらしい同田貫が刀をマフラーで拭っているのをおいて、燭台切が火を起こして蜻蛉切の側に膝をついた。首の傷の具合を見る。振り返った先で、大倶利伽羅が火のついた枝を取り上げた。
「いまだに、僕と和泉くんと長曽祢くんの見分けをつけてくれないからねぇ……困ったもんだよ……」
「俺も陸奥と間違われる……」
 大倶利伽羅の肩を叩きながら、鶴丸も自分を指さして笑う。
「俺も、『おい近侍』って声掛けられたことあるぜっ」
 たしかに、長谷部も鶴丸も似た身長で髪が白っぽい。
「まぁ、君の身長の人はいないから、間違われはしないと思うよ」
「愛染と間違えたりして」
「髪が赤いからか?」
「さすがにそれはなかろう」
「おい近侍っ! 進まねぇのかよ!」
 同田貫が、倒れている敵の太刀から刀を取り上げて振り回し、切っ先がまっすぐかどうか、空かし見ながら怒鳴った。
 彼が自分の刀で戦うのは初手だけだ。敵を倒すと、その刀で戦って使い捨てにする。刀を折るのが楽しいらしい、とみな理解していた。
「新参が重傷だ。撤退する前に……」
「おう……任せな……」
 刀を振り回しながら同田貫が蜻蛉切の側へ歩いてきて、焚火の炎で刀を焼いた。
「同田貫、これは新参の槍の蜻蛉切だ。覚えろ」
「でけぇ役立たずがいることは知ってる」
「初槍だぞっ! お前に殺されてはかなわんっ! 首を狙うなよ!」
「蜻蛉切、君を動かすのは大変だから、手足を止血して落とすぜ? 痛くないならどうともない筈だ。気を抜いてろ。怪我はすぐに治る」
 同田貫が真っ赤になった刀を振り上げる。
 キラキラシャリン……
 また、あの美しい音を聞いて、蜻蛉切は哄笑をあげた。
 なんと美しい黄金の瞳なのか!
 まるで雪山に君臨する鷹のようだ!
 無い腕で、蜻蛉切は同田貫を抱きしめた。

 そのあとも、蜻蛉切は重傷になるたびに同田貫に手足を切断されて馬に担ぎ上げられた。転送ポートが近いときに、足を二本切り落とすのは面倒だ、と腹を両断されたこともある。
 そのたびに蜻蛉切はキラキラシャリン……と、あの綺麗な音を聞いていた。進んで怪我をする気は無いが、重傷になれば同田貫が斬ってくれてその音が聞ける。それはひそかに蜻蛉切の楽しみにもなっていた。
「てめぇ、いい切り心地になってきやがったじゃねぇかっ」
 錬度が上がって、体の強度も付いた蜻蛉切に同田貫が舌なめずりする。
 錬度50になった蜻蛉切の腕を一刀両断できるのは同田貫だけだ。否、他のものも、すれば出来ただろうが、進んでそんなことをしたいものはいない。同田貫は捨て刀でするから、『自分の刀が折れる』という心配はないが、みな、他人の刀など使いたくはないし、他人の刀で自分のウエストほどもある蜻蛉切の腕を切断できるとは思えなかったのだ。
 
 

   短刀達が、花を綺麗だときゃっきゃ騒いでいる。
 ナニが『綺麗』なのかわからないタヌキ。
 ▲を【見上げて】
 タヌキを愛おしくてたまらないけれど、タヌキはいつも無表情で自分がどう思われているのかわからない。
 その時に
「ああ……お前は綺麗だな」
 と言われて、やっと安心する▲。

作成日: 2017年3月5日(日) 22時11分
作成日: 2017年3月5日(日) 22時50分

 

 


 ↑ ここまでが原稿

事故で首を怪我したかたが

とても綺麗な音を聞いた、とおっしゃっていたので

それを『キラキラシャリン……』で再現。

 

無骨な話ですが、血の殺伐とキラキラシャリン……の優美さwを入れてみました。

 

ここまで来ても、まだ冒頭しか書いてません。

 

第一稿が  21時58分

この第五稿の着手が

作成日: 2017年3月5日(日) 22時11分

完了が ↓ 
作成日: 2017年3月5日(日) 22時50分

ここまで一時間程ですね。

 

第一稿の時点で、話全体ができていないので、こんなもんです。

 

 

蜻狸『山百合の小兵』初稿~完成稿 | 小説の書き方-プロ作家が答えます

 ↑ この小説の初稿から完成稿の一覧。

 

 ↓ この記事での説明のための、記事です

【小説の書き方】第一稿はとにかく文字にする【初歩】 | 小説の書き方-プロ作家が答えます

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